第64話 彼女は隼人との初めての夜をドタキャンして祖父に会いに行き、祖父は全財産を彼女に託した

桜塢グループ、社長室。

午前十時過ぎ、凛は書類を処理していた。スマートフォンが光る。隼人からLINEが届いていた。二行だけ。

「昼の弁当は中止だ。別に手配してある。ちゃんと食え」

凛はその文字を一瞬見つめてから、返信せずにスマートフォンを伏せて置いた。今日は確かにいつもと違う。だが、追及する気にはなれなかった。向こうから取りやめたのなら、かえって気を遣わずに済む。

昼休み、ケイティ・ウィリアムズがいくつもの仕出し弁当の箱を抱えて入ってきた。銀座の高級会席料理店のもので、配達予約に二ヶ月待ちが必要な店だという。ケイティは興奮を隠しきれない様子で、一箱ずつ並べながら小さな声で付け加えた。

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