第66話 明け方、彼女は自ら彼の寝室に足を踏み入れた

凛は押しのけなかった。

唇と唇のあいだに、眠れぬ夜の熱がこもっていた。性急で、ざらついた感触が、言葉にできない何かをすべてこの口づけに押しつぶそうとするかのようだった。

背中はドアに押しつけられて痛み、胸元には隼人の体温が覆いかぶさっていた。隼人がごく低く、深い息を漏らし、唇を重ねたまま動きを止める。額を凛の額に押し当て、呼吸の乱れ方がいつもの彼とは違っていた。

遠くで、隆馬が静かに背を向けた。

「一晩中待っていたのに、連絡ひとつないとはな。おまえは本当に……」

声はかすれ、続きは喉の奥で消えた。

凛が目を上げると、隼人の目は充血して、今にも何かがこぼれ落ちそうだった。

「忙しい...

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