第70話 本物の「朧月夜」、皆の前で偽物を暴く

広間の中央で、腹の出た中年男が若い令嬢たちに囲まれていた。

男は顔を上げ、長年ちやほやされてきた者特有の満ち足りた表情を浮かべていた。周りを取り巻く少女たちは声を潜めて質問し、その声は媚びるような甘さに満ちていた。

「先生、今回のツアーでは本当に弟子を取らないのですか?」

男は鼻で小さく笑うような吐息を漏らした。否定とも、肯定ともつかない調子だった。

咲良は人垣をかき分けて入り込んだ。左頬を令嬢の絹扇の骨で掠られ、傷口が再びじくじく痛む。唇を噛んで耐え、恨みに染まった顔をけなげな表情へと無理に整える。

男が「生まれつきの舞台骨格」と口にするのが聞こえた瞬間、心臓が跳ねた。勢いよく前へ...

ログインして続きを読む