第78話 数十億の養育費を要求して振り込まれたのは三万

凛は画面を数秒見つめてから、立ち上がって床まで届く窓へ歩み寄った。

夜風。入り口に、背の高い黒い影がひとつ立っている。濃色の羽織の裾が風に揺れ、その男は顔を上げる。視線が階を越えて、彼女と絡んだ。

隼人の口元に、かすかな笑みが浮かぶ。何かを目元に押し込めるような、控えめな笑みだった。

凛は部屋着のまま、素足で玄関に立った。一瞬迷ってから、階下へ降りる。

ドアを開けると、隼人はすでに羽織を脱いでいて、それを彼女の肩に掛ける。布地には彼の体温が残り、微かに彼の匂いがした。

「夜は冷える。風邪を引くな」

凛は動かず、ただ彼を見た。

「どうして来たの」

「会いたかった」

彼の声は夜風...

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