第79話 遠野家、十八年の家計簿を調べ、凛が一銭も使っていなかったと知る

健吾は春奈の後ろに立ち、振込金額の表示をただ見つめていた。弁護士は振込票のコピーをテーブルの上に置き、無意識に紙の端を指先で押さえて、小さく息を吐いた。

「落ち着け。まだ入金されたばかりだ。この後、追加があるかもしれない」

健吾の声は低く、春奈は「そうよ、まだ続きがあるわ」と、まるで自分に言い聞かせるように言った。スマホを握りしめたまま、画面を何度もつけては消す。その冷たい光が、こわばった顎の線を何度も浮かび上がらせた。

健吾は窓際を行ったり来たりし、指先で窓枠を無意識に叩いていた。

四時が過ぎ、五時になった。

スマホは死んだ物のように静かだった。

春奈は勢いよく立ち上がり、スマホ...

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