第80話 ラボ徹夜突破の後、兄が帰国した

凛が山頂に着いた頃には、夜の闇がすっかり濃くなっていた。実験棟の輪郭は、数基の冷白色の投光器に照らされ、山腹に埋め込まれた異形の金属のように非現実的に浮かび上がる。

正面からは入らなかった。

建物の東側に回り、目立たない通用口に指を触れると、扉は音もなく開いた。中の廊下は長く、明かりはついているのに、自分の足音だけが響くほど静かだった。

エレベーターで地下三階へ降りる。扉が開くと同時に、消毒液と試薬の匂いが混ざって鼻をついた。

氷室拓也は本当にいた。それだけではなかった。六人の研究員がそれぞれの持ち場に散らばり、休む気配など微塵もない。凛の姿を認めた氷室は、立ち上がりかけに椅子を蹴りそ...

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