第81話 競合に設計を盗まれ、澤田が彼女を退かせようと迫る

凛の視線は手元の書類に落ちていたが、脳裏にはケイティから以前聞いた断片的な言葉が浮かんでいた。

九条龍介。まだ正式に顔を合わせたことのない長兄は、少年時代に倒産寸前だった一族の子会社をたった一人で立て直して上場させ、若くしてグループ中枢の意思決定の座に就いたという。優香が以前、何気ない雑談の中で口にした。龍介は今も独身で、一族内で一番の懸念事項だと。

凛は頭を振り、その思考を追いやる。そして改めて目の前の書類へ意識を戻した。

一枚の報告書をめくり、指先を紙面に二秒ほど置く。視線はもう次の行のデータへと移っていた。

桜梧本社ビル近くの料亭。

隼人は凛の向かいに座り、しなやかな指先でゆっ...

ログインして続きを読む