第84話 澤田が祝杯を挙げる頃、凛は彼が会社を売り渡した決定的証拠を掴んでいた

さらにメッセージが表示された。

「明日の午前、赤坂。手元のものを持ってこい」

沖村の呼吸が急激に荒くなる。変形した手首を見下ろすと、痛みが針のように神経を刺した。高利貸しからの督促電話は鳴り止まず、画面が点滅し続けている。澤田天馬が約束した振り込みは、まだ届かない。

最後に残っていたわずかな望みが、音を立てて崩れた。凛は知っている。自分が何を背負い、何を握っているのかも。

沖村は迷わなかった。左手で一文字ずつ打ち込む。

「協力する」

メッセージは送信済みになった。

同じ頃、凛は桜塢グループの個人オフィスにいた。目の前のモニターは三枚に分割され、左側には沖村名義の口座の変動がリアル...

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