第86話 澤田を特捜部が逮捕。九条龍介は初めて妹の実力を目の当たりにした

澤田は大きく一歩後退り、背中を後ろの鉄箱にぶつけて鈍い音を立てた。その衝撃で床に溜まっていた埃がふわりと舞い上がる。彼は震える手でスーツの内ポケットからスマートフォンを取り出し、指先で画面を激しく操作した。

「金はもう振り込んだはずだ!よく見ろ!二回に分けてだ!どちらの振込履歴も残っている!」

画面を沖村の目の前に突きつけた。振込のスクリーンショットがくっきりと表示され、金額も日時も口座情報も完璧に揃っていた。

沖村は見ようとせず、顔を背けた。視線は床に落ちている画面の割れたスマートフォンに向いたまま、声は紙やすりで喉を擦ったようにかすれていた。

「その金は、一度も受け取っていない」

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