第92話 結衣が倒れても龍介は心を残さない。凛の足音に彼は自ら立ち上がる

電話口の曾根崎は、明らかに一瞬戸惑った。

「財界の大物のプライベートディナーさえお断りになってきた方が、まさか審査員をお引き受けになるとは。正直、今でも信じられません」

龍介は返事をしなかった。通話が切れると、書斎は再び静まり返った。

龍介はすぐに仕事へ戻らず、「Blanc」の公式サイトを開いた。

新作はすでに入れ替わっていた。

龍介の視線はゆっくりとページを辿り、いくつかの細部の変更に留まる。ラインの収束位置、石留めの層の重なり、そして病的なまでに研ぎ澄まされた比率の制御。そのすべてが、同じ審美眼によって貫かれていた。

内省的で、正確で、そのくせ異様なほど鋭い。

龍介はしばらく...

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