第94話 器材箱を押しつけた瞬間、控え室は静まり返った

凛の目つきが一変した。岩礁と茂みの奥から、黒い影が潮のように音もなく押し寄せてくる。十数人。刃物を持っている。他にも何か。

凛は琴音を背に庇い、彼らの立ち位置と手にしたものを素早く観察した。金目当てではない。準備周到で、狙いは明確だった。

琴音は全身を震わせながらも、凛を後ろへ引っ張ろうとした。後部座席にあった空のペットボトルを掴み、一番近くの男に投げつける。男はわずかに首を傾げ、肩に当たっただけで、無表情のまま距離を詰めてきた。

刃が光った。琴音はぎゅっと目を閉じる。痛みは来なかった。

震えながら目を開けると、横から伸びた腕が、刃物を持つ男の手首を五本の指で掴んでいた。正確で、揺るぎ...

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