第108章

男が口を開くより早く、西園寺千枝がすかさず制した。

「やめとこ。言っちゃったら、効かなくなるから」

黒瀬冬真が、わずかに眉を上げる。

千枝はダイニングの照明を点けた。冬真がケーキにナイフを入れようとした瞬間、ぴくりとまぶたが跳ねる。

「えっと……このケーキ、食べないほうがいいかも。ろうそく立ててお願いごとするだけにしよ? 食べるのは……うん、なしで」

自分で味見した。正直、あまりおいしくない。

さっき「それ以上笑ったら食べさせない」って言ったのも、冗談のつもりだったのに。

それでも黒瀬冬真は平然と一切れ切り分け、骨ばった白い指で小さなフォークを持ち、ひと口だけ口に運んだ。

千...

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