第13章

次の瞬間、西園寺千枝は口元をきゅっと持ち上げ、目尻までふわりと弧を描かせた。

「私、客室に移る!」

黒瀬冬真「……」

千枝は艶のある唇を軽く結ぶ。

「ずっと冬真の部屋を占領してるの、さすがに申し訳なくて」

冬真は何も言わず、しばらく彼女を見つめていたが、不意に口角を上げた。

「千枝が俺に遠慮する日が来るとはな」

「は?」千枝は一瞬ぽかんとしてから、むっと睨む。「どういう意味!」

まるで自分が厚かましいみたいじゃない。

男は左手を持ち上げた。手首の骨がすっと浮き、妙に色気がある。そこに、くっきりと歯形が残っていた。

「子どもの頃、俺に噛みついた時は、ずいぶん凶暴だったけど」...

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