第131章

可笑な話だ。こんなふうに侮蔑の色を含まない呼び方を、母の口から聞いたのはこれが初めてだった。

西園寺雪枝は、これまで私を呼ぶときはフルネームか、「この死に損ない」「ろくでなし」といった罵り言葉ばかり。

本来なら一言も取り合う気はなかった。けれど西園寺千枝は、ほんの少しだけ興が湧いた。瑾人と菅野徹に目で合図し、雪枝と連れ立って脇の噴水池のそばへ移動する。

ちょうど夕陽が傾き、落日の名残が水面に降り注いでいた。まるで砕いたダイヤをひと掴み撒いたみたいに、きらきらと波が光っている。

千枝は景色に目もくれず、冷えた声で切り出した。

「で、何の話?」

雪枝は肩に掛けたバッグのストラップを指...

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