第143章

以前なら、西園寺直哉は西園寺紗良があんなふうに噂されれば、真っ先に前へ出て庇ったはずだ。

だが今の直哉は、その場に立ち尽くしたまま動かない。紗良が罵られているのも、みっともなく追い詰められているのも、まるで耳にも目にも入っていないかのように。

彼の視界にいるのは、たった一人だけだった。

人混みの中心で、息を呑むほど艶やかに立つ――西園寺千枝。

周囲の人間はすべて霞んで見えるのに、千枝だけが異様なほど鮮明だった。

あれは、彼の実の妹。

向けられる蔑みと嘲笑の視線が背中に突き刺さり、直哉は耐えきれず逃げ出したくなる。なのに、目だけは勝手に千枝へと縫い止められてしまう。

その頃、千枝...

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