第144章

執事はその言葉にぎょっとして、慌てて制止した。

「旦那様、おみ足が……」

執事の視線は、車椅子に乗った男の両脚へ落ちる。瞳に滲むのは痛ましさだった。

「まだ完治なさっておりません。今の状態でJ国へご自身で行かれれば、悪化する恐れが――」

男は片手を上げ、先を言わせない。

「脚なんてどうでもいい」

大事なのは、妹だ。

妹は生まれながらにして何不自由ない環境で育つはずだった。一家でたった一人の娘。誰もが掌の上で大切にする宝物――その子が、幼いころに行方不明になった。

それから何年経とうと、捜索をやめたことはない。

ほんの小さな手がかりでも、似た雰囲気の少女を見かけただけでも、総...

ログインして続きを読む