第155章

西園寺千枝はしばらく呆然としていたが、ふと我に返った。――これが、さっき瑾人が言っていた「サプライズ」ってやつ?

会場の客席はこの瞬間、芸能界の大物だろうが財界の重鎮だろうが関係ない。名媛や令嬢たちまで、みっともなさも忘れて首を伸ばし、ステージへ視線を注いでいた。

黒瀬冬真が、仕立てのいい黒のスーツに身を包んで登壇する。長い脚で歩を進め、白いシャツのボタンは一番上まできっちり。禁欲的なのに、妙に色気がある。

男の視線が、客席を漫然となぞる。

日月さえ霞むほど整った顔立ちは、どこか淡々としていて、近寄りがたい。骨の髄から滲むのは、上に立つ者の余裕と気配――。

ところが、客席のある一点...

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