第160章

だが、事を発表する前に、司会者はにこやかに西園寺千枝へひとつ質問を投げた。

「西園寺千枝さん。先ほど黒瀬社長が『あなたの熱心なファンだ』とおっしゃっていましたが、今のお気持ちは?」

――気持ち?

西園寺千枝は心の中で鼻を鳴らす。

いま一番したいのは、黒瀬冬真を捕まえて、じっくり問い詰めることだ。

けれど、客席にはこれだけ人がいる。そんな答えを口にできるはずもない。視線が黒瀬冬真の上で数秒だけ止まり、それから淡々と返した。

「驚きましたし、光栄です」

その言葉に、黒瀬冬真の眉がほんのわずかに持ち上がる。

会場の反応は「そりゃそうだろう」という空気だった。驚かないほうが不自然だ。...

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