第162章

西園寺千枝がそう紹介し、「旦那」と呼んだ瞬間、場の空気がすっと凍りついた。

一条瑾人の顔には驚きがありありと浮かぶ。千枝は兄貴とこのままずっと隠し婚を貫くものだと思っていたのに、まさか橘薫の目の前で、こんなふうに兄貴を紹介するなんて……。

――うおお、千枝がついに兄貴に「名分」をくれた!

一条瑾人は感動で目がうるうるする。

今日という日を記念日にしたいくらいだ。名前は――「兄貴がついに名分を得た記念日」!

雪見裕也が調べた資料では、西園寺千枝と黒瀬冬真は隠し婚となっていた。にもかかわらず、千枝は自分の求婚者の前で、黒瀬冬真をそう紹介した。

黒瀬冬真と橘薫、どちらが千枝の中で重いの...

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