第163章

西園寺修司は黒瀬冬真を前にすると、いつもの落ち着きが影を潜め、瞳の奥にわずかな緊張が滲んだ。

一方の西園寺宗一郎は、興奮を隠しきれない笑みを顔いっぱいに貼りつけ、皺がくっきり浮くほど頬を引きつらせながら腰を折る。

「黒瀬社長、はじめまして! 私は千枝の父でございます。まさか社長が小娘をそこまで評価してくださるとは……身に余る光栄です!」

その瞬間、西園寺千枝の表情がすっと冷えた。

千枝?

小娘?

――笑わせる。

西園寺家にいた頃、宗一郎が彼女をそんなふうに呼んだことが一度でもあっただろうか。

黒瀬冬真が「評価する」と口にした途端、途端に媚びへつらうその顔。へりくだった声色。卑...

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