第179章

一条瑾人は焦りと驚きで手が震え、もう一度、西園寺千枝の携帯へかけ直した。だが今度は、電源が落ちている表示が出るだけだった。

「……電源、切れてる?」

背中に冷たい汗が一気に噴き出す。

千枝に万が一のことがあったら、自分は生きて日本へ帰れない。兄貴にどう顔向けすればいいんだ――!

雪見裕也は鋭い目で人波の向こうを探りながら、懐からスマホを取り出した。同行のボディガードに連絡し、手分けして捜索させるつもりだった。

ところが、画面を点けた瞬間――着信。

相手は雪見家の兄貴だった。

兄貴が、こんなタイミングで?

裕也は指を滑らせて通話を繋ぐ。

「兄貴」

『私だよ私! 西園寺千枝!...

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