第19章

「10……10億?!」

「うそだろ!!」

その値が口にされた瞬間、まるで平地に雷が落ちたみたいに空気が震え、ホールにいた全員の言葉が奪われた。ざわめきは途切れ、次の一拍が来ない。――静寂。

壇上の競売人ですら驚きで舌を噛みかけ、声が震えた。だが次の瞬間、興奮に押し上げられた音量で叫ぶ。

「皆さま! 2階の個室のお客様が、10億でご入札です! はい、10億! いきなり10億を提示されました!!」

競売人は知っている。2階個室の“あの方”はこのオークションハウスの大株主であり、黒瀬グループの総裁――黒瀬冬真だと。

だが黒瀬はいつも徹底して目立たない。身分を晒すことなど一度もない。

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