第191章

一瞬、西園寺千枝は足を床に縫い付けられたみたいに、その場で固まった。

暗算してみる。黒瀬冬真に「十年以上好きな人」がいるなら――学生の頃から、ずっと誰かを想い続けていることになる。

そんな昔から。

胸の奥が、なんとも言えない味で満たされていく。さっきまで空腹でたまらなかったのに、急に食欲が消えた。

知りたい。黒瀬冬真が好きなのは、いったい誰なのか。

でも同時に、こうも思う。

いや、ないでしょ。黒瀬冬真みたいな条件の男を、十年以上も振り続ける女の子がいるなら――それ、目が節穴なんじゃないの?

けれど、一条瑾人のあの物悲しい言い方は、冗談には聞こえなかった。

つまり黒瀬冬真には、...

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