第196章

西園寺千枝は悪さをやらかすと、くるりと踵を返して一目散に逃げた。

帽子についた長いウサギ耳が、走るたびにぴょんぴょん跳ねる。

黒瀬冬真は不意打ちで雪球を食らい、舌先で頬の内側を軽く押した。逃げていく背中を、笑っているのかいないのか分からない顔で見送る。

「西園寺千枝。投げる度胸はあるくせに、怖くなって逃げるのか?」

千枝は「ここなら安全」と思える距離まで走ってから、ようやく足を止めた。

「どこが逃げてるのよ。散歩してるだけ、散歩!」

散歩……ね。

いいだろう。

冬真は軽く手招きする。

「戻ってこい。別に怒ってない」

「ほんとに?」千枝は疑い深い。

冬真は頷いた。

――...

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