第203章

西園寺千枝はその問いを聞くと、澄んだ眼差しをすっと客席へ向けた。視線の先にいるのは、西園寺隼人。

羽のように軽いはずのその目線が、隼人にとっては鋭い氷の刃だった。背筋がひやりと粟立ち、思わず肩が強張る。

西園寺隼人は背中を這い上がる寒気を飲み込み、無理に視線を返した。

「どうした? お前、応援してくれてるレースファンに、ひと言の説明すらしないつもりか?」

その言葉に、ローレンスは年季の入った眉をきゅっと寄せる。

この西園寺隼人という男は、どうしてこうも毎回わざと突っかかって、千枝に噛みつくのか。

雪見裕也もまた、危うい光を宿した目で隼人を見据えた。

――恩知らず。千枝がどれだけ...

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