第217章

男がふいに距離を詰めてきて、西園寺千枝は細い睫毛をふるりと震わせた。瞳には透きとおるような水気が揺れている。

「写真に写ってた男の人、あなたじゃないって分かったよ。なのに、なんで嫉妬するの?」

「分かる前は?」

彼は千枝の目をまっすぐ見据えて問う。

西園寺千枝は少し思い返した。黒瀬冬真に別の女との噂が出たと聞いたとき、確かに一瞬だけ「え?」とは思った。でも、彼を疑う気持ちは湧かなかった。

「信じてる」

千枝は手を伸ばして、彼の肩をぽんぽんと叩く。これ以上ないくらい真剣な目で、こくりと頷いた。

この答えを聞いたら、冬真もきっと嬉しいはずだ。

だって、誰だって信じてもらえたら救わ...

ログインして続きを読む