第36章

西園寺千枝はわずかに俯いた。ぬくい風が頭皮を撫で、黒瀬冬真の指が髪の間を軽やかにすり抜けていく。心地よさに、目が自然と細くなる。

しばらくして、ドライヤーの音がすっと途切れた。

「乾いた?」

千枝は顔を上げ、手で髪を確かめる。すっかり乾いていた。

冬真は手を伸ばし、こめかみのあたりの後れ毛をそっと耳にかけてやる。

指先がふいに、白くなめらかなうなじの肌へ触れた。喉仏が小さく上下し、声にわずかな掠れが混じる。

「……できた」

千枝は首筋がくすぐったくて、びくっと肩を震わせた。

「そこ触らないで。くすぐったい」

男は眉を軽く上げ、もう一度だけ、わざと触れる。

「ここが?」

...

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