第46章

西園寺怜司ははっきり覚えている。あのとき病院で目を覚ました直後、西園寺紗良が「私が怜司兄を助けたの」と言い、「西園寺千枝は一人で逃げた」とまで言い切ったことを。

当時の彼は、ちょうど西園寺千枝を疎ましく思っていた。そこへ紗良のその言葉だ。嫌悪は一気に膨れ上がり、丸一か月、千枝を門前払いにした。会うことすら拒んだ。

いま思えば――あの一か月、千枝は説明したかったのだろうか。真実を、彼に伝えたかったのだろうか。

それなのに彼は、紗良の片方だけの話を鵜呑みにして、千枝に会うことすら許さなかった。挙げ句、「その顔を見るだけで吐き気がする」とまで言った。

あのときの千枝は、どれほど心細く、どれ...

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