第51章

西園寺千枝は後ろめたさに喉を鳴らし、唾をこくりと飲み込んだ。

「えっと……」

言い終える前に、男が気だるげな調子で口を挟む。

「俺さ、人とキスしたの初めてなんだよね。しかも、いきなり奪われるっていう」

西園寺千枝「???」

奪われる?

千枝はますます居たたまれなくなり、黙って布団をめくってベッドを降り、その場から逃げようとした。

逃げるのはみっともない。けれど、効く。

二歩も行かないうちに、静かな部屋にまた動画の再生音が響いた。

「うん、噛んだの、私!」

「ほら、ここ! 私が噛んだの!」

西園寺千枝は足がもつれて、ぐらりとよろける。耳まで真っ赤になって爆発しそうで、反射...

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