第66章

西園寺千枝は一瞬きょとんとして言った。

「……なに?」

黒瀬冬真は彼女を見下ろしたまま、瞳の奥に重たい闇を押し込めている。白い整った顔立ちは、薄く霜でも降りたみたいに冷え切っていた。

胸の底で、嫉妬がまたぶり返す。

西園寺千枝が自分を褒めたのは、酔っているときだけだった。

それなのに今は、橘薫のことをあんなに真っすぐ――。

無言で見つめられ続け、千枝の心臓がどくどくと騒ぎ出す。

逃げようと身をよじったが、冬真は逃がさない。

顎をつままれ、骨ばった冷たい指先が肌の上をゆっくりとなぞる。

しばらくして、凛とした声が落ちた。言葉の端に、冷気が絡みつく。

「西園寺千枝。お前、目は...

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