第68章

西園寺千枝の胸が、ふっと跳ねた。たんぽぽの綿毛を指先で弾いたみたいに、やわらかなものがはらりと落ちてくる。

唇がかすかに動く。なのに、言葉が出てこない。

黒瀬冬真は箱からピアスを取り出し、甘く誘うような声で言った。

「つけてあげよっか」

西園寺千枝はちらりと彼を見て、そっと頭を寄せる。

骨ばって冷たいほど白い指先が、綺麗なピアスをつまむ。動きは驚くほど丁寧で、彼は彼女の耳にそれを通した。

つけ終えると、柔らかな白い耳たぶを指で軽く弾く。

視線はどこか名残惜しそうで、優しく絡みつく。

「似合う」

西園寺千枝の耳たぶが一気に熱くなり、頬までじわっと火照った。落ち着かないまま耳に...

ログインして続きを読む