第81章

どれくらい時間が経ったのだろう。

西園寺千枝は男の腕の中から身を起こした。水を含んだような瞳がきらりと揺れ、目尻には淡い紅が差している。甘く艶めいた声で、途切れ途切れに言った。

「黒瀬冬真、あんた……あんた……」

一拍置いたかと思うと、今度は顔を真っ赤にして怒鳴る。

「無視してやる! ううん、絶交! あんたとは絶交! 一生、絶交だから!」

黒瀬冬真は眉をわずかに上げ、立ち上がった。

西園寺千枝の心臓がきゅっと縮む。――また、来る。

そう思った瞬間、彼女は踵を返して書斎を飛び出した。

自室へ駆け戻り、ドアに背中を預ける。呼吸は乱れ、脚はふにゃりと力が抜けていた。

思わず指先で...

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