第146章

渕上純は終始、慎み深い笑みを崩さずにいた。余計なことは口にしない。名士たちが集い、互いをおだて上げる場ではあるが、追従にも限度というものがある。過ぎた世辞は、かえって逆効果にしかならないことを彼女は知っていた。

神原文清との約束をすっぽかしたのは、彼への報復という意味合いもあったが、それ以上に、一昨日届いた海外のピアノコンクールからの予選通過通知が理由だった。

ネット選抜によるこの大会は、全国どこからでも参加可能だが、本選への切符はわずか二十枠。二ヶ月前、渕上純はダメ元で自身の演奏動画をアップロードしたものの、その後は梨のつぶてだった。

全国規模の大会であり、チャンスは極めて薄い。落選...

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