第153章

男は隣に寄り添う女へと視線を向けた。その声は、どこか掠れている。

「今夜のお前、どうかしてるぞ。何がそんなに嬉しいんだ?」

瞳を閉じていた女は、うっすらと瞼を持ち上げ、またすぐに閉ざした。

「だって……ようやく、私自身の人生が手に入るんですもの。もう誰にも……管理されずに済むのよ。こんなに嬉しいこと、他にないでしょう?」

その言葉に、神原文清は虚を突かれたように動きを止める。

「……どういう意味だ」

「私、ここから居なくなるの。ずっと、ずっと遠くへ行くのよ。順調にいけば、九割方……新しい生活の始まりね。本当に嬉しいわ。これ以上ないくらい、最高に」

渕上純の目元が緩む。泥酔に近い...

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