第154章

部屋を出た瞬間、渕上純の鼻腔をくすぐったのは、濃厚で芳しい料理の香りだった。それだけで気分が高揚し、間違いなく美味しいと確信させる匂いがあたりに漂っている。

階下へ降りる。まだ馴染みのない家だが、間取りの記憶を頼りにダイニングへと向かうと、そこには神原文清の姿があった。彼はテーブルの傍らで、テイクアウトの容器を開けているところだった。

彼女に気づき、彼は気怠げに視線を向ける。

「飯が届いたタイミングで降りてくるとはな」

「すごくいい匂いがしましたから。でも、今の時間だとお昼ご飯兼用でしょうか?」

渕上純は歩み寄り、彼を手伝って容器を広げ始めた。

男は淡々と言い放つ。

「まさか。...

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