第156章

移動中、車内の空気は静まり返っていた。ぽつりぽつりと会話が交わされるものの、以前の張り詰めた緊張感に比べれば、二人の間には随分と穏やかな時間が流れている。

「叔母上が気づいていないとは限らんぞ」

その言葉に、渕上純は一瞬きょとんとした。

「大会のことですか?」

「ああ。あの人を欺き通すのは無理だ。時間の問題だろう」

彼女の心臓が、見えない巨石で押し潰されたように跳ねた。唇が震え、頭の中が真っ白になる。

甘かったのだ。自分が口を閉ざしていれば露見しないと思い込んでいた。だが、鈴木真子という人間は常に彼女の動向に目を光らせている。コンクールのような大きなイベントだ、少し気をつけていれ...

ログインして続きを読む