第162章

鈴木真子の瞳に突如として凶悪な光が宿った。彼女は躊躇なく鞄から一本の注射器を取り出す。間髪入れず、二人のボディガードが暴れる渕上純を取り押さえ、その口を太い腕で塞いだ。純は見開いた目で、自分の首筋に針が突き立てられるのを絶望と共に見つめるしかなかった。

意識が途絶え、視界が漆黒に染まる。彼女はそのまま闇の中へと沈んでいった。

神原文清は車を神原グループの本社へと滑り込ませた。地下駐車場から専用エレベーターで最上階へ向かう間も、なぜか胸のざわめきが収まらない。車を降りた瞬間から感じる、正体不明の焦燥感。何かが起きる――そんな予感が、彼の心を支配していた。

その時、中村瑞が社長室に入ってき...

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