第171章

部屋でしばらく心を落ち着かせてから、小林海は階下へと足を運んだ。ダイニングではすでに、渕上純と小林香理が朝食を囲んでいる。彼の姿を認めるなり、渕上純が椅子から立ち上がった。

「ご飯ですよ」

「あ、ああ……」

なぜだろう。渕上純の姿を目にした瞬間、小林海の胸の奥になんとも言えない複雑な感情が込み上げてきた。胸郭の内で、名状しがたい想いが渦巻くようだ。

自分でも驚くほどの感覚だった。

こんな気持ちになるのは、生まれて初めてのことだ。

席に着くと、渕上純が甲斐甲斐しく朝食の皿を彼の前へと並べてくれた。そして、少し声を潜めるように尋ねる。

「小林海、昨日の夜のこと、神原文清には話した?...

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