第172章

 中村瑞は小さく溜め息をつくと、意を決して口を開いた。

「神原社長は目を覚まされましたか? もう朝の八時を回っています。社長に報告すべき案件がありまして」

 すると風見紬は、さも自分が此処の女主人であるかのように振る舞い、冷ややかに言い放った。

「あら、中村さん。気が利かないわね。文清が昨夜どれだけ飲んだか、あなたも見ていたでしょう? そんなに急いでどうするの。それに、彼は今日会社を休んで静養すると伝えたはずよ。たかが秘書の分際で、いちいち仕事の報告を仰ぎに来る必要があるのかしら?」

 確かに、風見紬のモラルハラスメントの手腕は大したものだ。だが、中村瑞も長年神原文清に仕えてきた身だ...

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