第185章

ポケットからスマホを取り出す。予感は的中した。画面には無機質に「鈴木真子」の文字が浮かんでいる。

瞬間、渕上純の心臓が早鐘を打つ。見えない巨人の手で、胸の奥底を鷲掴みにされたような圧迫感だった。

その異変を、神原文清は見逃さない。ふと顔を上げ、純へと視線を投げる。逆さまになった画面を一瞥しただけで、彼は相手が誰かを即座に理解したようだ。

「出たくないなら切れ。相手にするな」

奥歯を噛み締め、純は拒否ボタンを押した。

今は、この穏やかな時間を壊されたくない。たとえ後で鈴木真子に泥を塗られるとしても、今この瞬間だけは守りたかった。

だが、数秒と経たずに着信音が鳴り響く。切っても、切っ...

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