第263章

渕上純の神経は極限まで張り詰め、無意識のうちに両手を固く握りしめていた。その瞳には期待の光が揺らめいている。この瞬間、彼女は心に決めたのだ。目の前にいるこの男の妻になる、と。

歓声が渦巻く中、二人は市役所へと足を踏み入れた。関係者以外の立ち入りが制限されているため、警備員が野次馬を外で食い止めている。神原文清は純の手を引き、堂々と中へ進んでいった。

心臓が早鐘を打つ。ガラス越しに溢れんばかりの人だかりを見やり、純は胸元を小さく押さえながら、思わず口にした。

「……あなた自身に影響が出るんじゃないかって、怖くないんですか?」

「何の影響だ?」

男は眉を挑発的に跳ね上げる。その視線は既...

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