第267章

冷蔵庫の扉を開いた渕上純は、庫内がもぬけの殻であることに気づいた。まるで新品同様、塵ひとつない清潔さだ。

これは神原文清が普段まったく自炊をしないか、あるいはそもそも、この嵐野別荘に寄りつきもしないという動かぬ証拠だろう。

食材はおろか、キッチンを見回してみれば、鍋釜や食器の類さえ見当たらない。

なるほど。このキッチンは、ただの飾りというわけね。

仕方がない。引越しで体力を使い果たした純に、今から買い出しに出る気力は残っていなかった。一人で荷物を抱えて帰るのも骨が折れる。少し考えた末、彼女は配送サービスを利用することにした。

スマホで近隣のショッピングモールを検索し、最低限必要な調...

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