第269章

髪を乾かし終えた渕上純が部屋を出ると、そこに神原文清の姿はなかった。階段を降りてキッチンへ向かうと、彼が背中を向けて何かを温めているのが見えた。

彼女は歩み寄り、声をかける。

「冷めちゃいましたか?」

男は振り返り、軽く笑みを浮かべた。

「いや、お前が作ったスープを温め直しているだけだ。スープは熱い方が胃に優しいしな」

入浴前、渕上純は料理が冷めないようにと保温容器に入れておいたのだが、やはり少し温め直した方が美味しくいただけるようだ。

やがて神原文清が温まったスープを運び、二人は向かい合って席に着いた。揺れるキャンドルの灯り、美しい料理、そして目の前の愛しい人。それはまさに人面...

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