第298章

 渕上純は愉快そうに、そしてどこか勝ち誇ったように声を上げて笑った。

「変なこと言わないでよ。私が絵画を愛でるような人間に見えて? ただ貴重なものだから少し惜しい気がしただけ。でも、最初にお祖母様に差し上げると決めた以上は、ちゃんと渡すわよ。心が痛むのはあくまで私の個人的な心理描写にすぎないもの」

神原文清は口元をわずかに緩め、気づかれないほどの優しさを滲ませて言った。

「本気か?」

「当たり前でしょ。じゃなきゃ何のためにわざわざN市まで来たと思ってるの? 遠足じゃあるまいし」

 渕上純は呆れたように白目を剥いてみせた。

 本邸に到着したのは十時を回った頃だった。宴席はまだ始まっ...

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