第304章

渕上純に見つめられ、風見紬は反射的に身を竦めると、気まずそうに視線を逸らした。

楓田麻衣は強いて笑顔を作り、無理やり頷いてみせる。

「分かりましたわ、お義母様。私も年長者ですもの、目下の者といちいち張り合ったりなんかしませんわ」

神原老夫人の顔色が依然として優れないのを見て取ると、楓田麻衣は機転を利かせたように言葉を継いだ。

「お義母様、今日あたくしが参りましたのは、他でもございません。実は榎本龍一先生の書画を入手いたしましたの。お義母様への誕生日プレゼントにと思いまして」

榎本龍一の名が出た瞬間、会場全体に衝撃が走り、どよめきと感嘆の声がさざ波のように広がった。

書画の巨匠、榎...

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