第325章

姫野雅人とて子供ではない。渕上純と年齢も近く、二人の言葉に含まれた意味を汲み取れないほど鈍くはなかった。一瞬にして、得体の知れない熱が顔中に広がり、耳の根元まで赤く染め上げた。

彼はわざとらしく咳払いをした。

「ゴホン。……僕は先に食事に行きますね。さっきステーキが運ばれてくるのが見えたんで。僕、ステーキが大好物なんですよ」

そう言い残すと、姫野雅人は二人きりの空間を残し、脱兎のごとく速度を上げて宴会場へと姿を消した。

残された渕上純の顔は、瞬く間に茹で上がった蟹のように真っ赤になり、白磁のような耳まで鮮血が滴るかのように染まっていた。

彼女は憤死寸前だった。姫野雅人とは面識がなか...

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