第330章

艶めかしい気配が車内に溶け出し、じわりと発酵するように拡散していく。

何かに魅入られたのか、一瞬、渕上純はその感覚を心地よいとさえ感じてしまった。魔が差したように手を伸ばし、男の手を握る。だが、それもほんの一秒のこと。彼女は弾かれたように手を引っ込めた。

(最悪だわ……。私、どうかしていたんじゃないの? あんなことするなんて、あまりに滑稽すぎる)

一方、神原文清は身を屈め、その頭を彼女の首筋に預けてきた。熱い吐息が肌にかかる。薄い唇が触れた場所から微弱な電流が走り、痺れるような感覚が四肢へと駆け巡った。

渕上純の全身が強張る。実際、身体は反応してしまっていた。必死に理性を総動員し、失...

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