第358章

無意識のうちに、中村瑞は背後に立つ中村修の様子を窺った。その表情は弛緩し、瞳の奥には隠しきれない得意げな色が滲んでいる。

中村瑞は愚かではない。瞬時に悟った。これは間違いなく、中村修が仕組んだ罠だ。

だが、首謀者である本人がすぐ側にいる以上、渕上純に事の次第を弁明するわけにもいかない。

ちらりと渕上純を盗み見る。彼女の表情はあくまで平穏そのもので、それゆえに今の彼女がどのような心理状態にあるのか、全く読み取ることができない。

しかし、このような場面に出くわして、渕上純の心中が穏やかであるはずがなかった。神原文清との関係が長くは続かないと悟っていたとしても、修羅場というものを知っていた...

ログインして続きを読む