第390章

渕上純は深く、重たい溜息を吐いた。まるで胸に澱んだ無力感が、その吐息と共に大気へ溶け出していくかのように。

「……はあ。仕方ないですね」

その刹那、新田佐美が図々しくも部屋の中へ足を踏み入れてくる。この距離感の欠如には、さすがの渕上純も呆れを通り越して不快感を覚えた。

今夜の新田佐美という女は、渕上純にとって実に不可解な存在だった。

過ちを犯しては謝罪を繰り返すくせに、改善の兆しは皆無。これでは話にならない。

「神原社長、奥さん。何かお手伝いしましょうか? たとえば、私が奥さんの入浴介助をするとか」

唐突に新田佐美がそう切り出した。

渕上純は数秒間、彼女をじっと見据えた。その瞳...

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