第391章

「怒ってる? 私がどうして?」

 渕上純はとぼけてみせた。神原文清ほどの切れ者なら、とっくに彼女の心中などお見通しだろうことは百も承知だ。

 男の瞳が微かに揺らぎ、口元が緩む。

「俺たちの付き合いも長いだろう。それに、お前は今や俺の妻だ。まだ強がりを言うつもりか?」

 渕上純の瞳に複雑な色が掠めたが、唇には無理やり作ったような笑みを浮かべる。

「強がりって何のことかしら? あなたの行動が全てを物語っているじゃない。でも、おかげであなたへの認識を改めることができたわ。あなたが自ら進んで女子大生を家まで送ると言い出すなんて初めて見たもの。いいえ、あれは『送る』なんて生易しいものじゃなく...

ログインして続きを読む